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"やわらかい生活"(2006) [movie-や行]

久しぶりの邦画。

冒頭、寺島しのぶ演じる橘優子が、
ネットで知り合った男と訪れた蒲田に惹かれて引っ越し、カメラ片手に街をぶらつく様子が映される。
LOVE KAMATAというサイトを立ち上げ、写真と文章を掲載し、
何ものからも自由で、題名通りやわらかい空気感の中で生活を営んでいるような感じに見える。
けれど、次第に紐解かれていく彼女の本来の姿。
バリバリのキャリアだったのに頑張り過ぎて、親や親友の死をきっかけに躁鬱病を発症し、
仕事も男も失って、故郷にも帰らず、東京でひとり暮らす女。
はたから見ると「イタイ」女に見えるかもしれないけれど、
…私には少し羨ましいような気がした。
30を越えて結婚していない、フルタイムで働く女たちは、
精神的にぎりぎりのところで迷いながら生きている人も多いと思う。
結婚している、子供がいるからって迷いや悩みがないとは言わないし、男だったら楽だとは言わないけれど、
若さという鎧が剥がされ、可能性は狭まり、自らの拠り所を仕事と言いきるには辛すぎ、
生物学的なリミット(子供を産む)も近づくにつれ、
いかに社会的に認められる仕事をして、収入があろうが、
本当にやりたいことができている人なんて本当に一握りだろうし、
「このままでいいの??」「これでいいの??」という危機感のようなものは、ずっと付きまとう。
だから、周囲の目や自分のプライドや、そんななんやかやから解き放たれたように見える優子を羨ましく感じるのだ。

CAUTION!!
**この後の文章にはストーリーの一部が記載されています。
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優子の周りに集まってくる男たちと彼女の絡みがよい。
奥さんとうまくいかず東京に出てきた従兄祥一(豊川悦司)
EDで銀行員から都議会議員に立候補した同級生本間(松岡俊介)
鬱病の若いヤクザ安田(妻夫木聡)
ネット上で知り合った痴漢男K(田口トモロヲ)
どこかアンバランスで情けなさも漂う男たち。
ふらふらと、誘蛾灯に群がる虫たちのように優子の周りを飛び回る。
そんな男たちに対し、優子は常にありのままである。
この映画はそんな彼らと優子の関わり方が軸で、
冒頭感じたほど、蒲田という街と優子の関わりは濃くはない。
彼女が撮る街の写真や訪れる店なども、この映画の単なる背景、味付けにとどまる。

優子「死ぬの怖い?」
祥一「怖くないと?」
優子「私は死にたくなるのが怖い」

優子「いい男がいない」
本間「理想が高いんでしょ」
優子「理想が高いんじゃなくて私のレベルが高い」

彼女のセリフや立ち居振る舞い、些細な傷、細かいところに共感を覚えたくないのに、覚えてしまう。

豊川悦司が特にいい空気感を醸し出していた。
優子の生活の隙間にうまいことするりと入り込んでくる彼の存在が、
寺島しのぶという等身大の女優の存在感を際立たせる。
処女喪失の相手で、ダメ男なのに憎めない男前な従兄なんて、設定自体がずるい。

原作(読んだことはないけれど)、音楽や映像、役者、ほとんどが悪くなかったのだけれど、
最後、ある劇的な転換を表すシーンで、
電話を受けた優子がそれをすべて彼女のセリフで説明するシーンがある。
そこがこの映画の良かったところの大半をスポイルしてしまうくらい、ものすごく残念な展開だった。
まるで、もうすぐ頂上につくちょっと手前で、階段の途中がごっそり抜け落ちていて、
ちょっと離れた所からラストシーンを観させられた、という感じ。
ラストシーン自体は悪くないと思うのだけれど。

良くも悪くも、私が今の年齢で今の状況で観たということにすごく左右されてしまった映画だと思う。
もし自分が男だったり、女でも結婚していたり、すごく若かったり…
そうしたらこのレビューはすごく変ったものになっていたはず。
なんだか観終わって、温かいような、悲しいような、観なければよかった、と思うような、複雑な気分。

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やわらかい生活
2005/JPN/126min

監督:廣木隆一
プロデューサー:森重晃
原作:絲山秋子『イッツ・オンリー・トーク』(文藝春秋刊)
脚本:荒井晴彦
撮影:鈴木一博
美術:原田恭明
衣裳:宮本まさ江
編集:菊池純一
音楽:nido

出演: 寺島しのぶ/豊川悦司/松岡俊介/田口トモロヲ
妻夫木聡/大森南朋/柄本明


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