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"CRAZY HEART-クレイジー・ハート(2009)" [movie-c]

かつて人気のあったカントリーミュージシャン、バッド・ブレイク。
一世を風靡した時期もあったものの、新作を出すこともなくなり、
いまや酒に溺れて、仕事も地元のボーリング場での営業が精一杯。
所属事務所に新作を出せとせっつかれても、自堕落な日々を送る毎日。
けれど、そんな57歳の彼が、ひとりの女性ジャーナリストと出会い、自分を変えてゆく、そんな物語。
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昨年主演のジェフ・ブリッジスのアカデミー賞受賞で話題となっていたので、記憶にも新しい。
何より設定がわかりやすく、すんなりと観る側の思考に入り込んでくる。
かつての栄光にしがみつき、才能の枯渇と人生に諦めを感じている堕落したミュージシャン、
彼を変えるきっかけとなる女性の存在、トラウマと葛藤の克服、そして復活。
ドサ周りで生活を支える酒浸りのミュージシャンが、ひとりのシングルマザーに惚れて、
一念発起し、紆余曲折あった後に、老境を目前にして新しい自分を確立してゆく。
日本におきかえれば歌謡曲や演歌の世界におきかえられるかもしれないけれど、
こういう設定は日本人にも感情移入しやすいと思う。

色んな意味で、本当に素直な作品だと思った。
監督第1作であるスコット・クーパーの、なんの衒いもない姿勢が見て取れる。
そこに"ビッグ・リボウスキ"などでの特異な演技が印象に残るジェフ・ブリッジスの、
意外にも率直な演技がはまっている。
設定もベタだし、出てくるキャラクターも悪く言えば紋切り型に近いのに、
なぜか好感を持ってしまうのは、役者の巧さと、演出の素直さと、キーである音楽の質の高さだろうと思う。
アカデミーの助演女優賞は逃したものの、ヒロインであるマギー・ギレンホールの、
美人というには物足りないけれどなぜか好感を持ってしまう、そんな存在感も相乗効果をうんでいた。
個人的にはコリン・ファレルのベタなキャラクターにも面白味を感じられたたし、
ただのべたなハッピーエンドのラブストーリーではなかったところもいい。
けれど、なんだか少し物足りなさを感じてしまうのは、
私自身が少しばかりひねくれているからかもしれない、そんな感想を持ってしまった映画だった。
本当に、素直に観られる、素直なアメリカ映画。そんな作品。

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CRAZY HEART
クレイジー・ハート
111min/USA/2009

監督:スコット・クーパー
原作:トーマス・コッブ
脚本:スコット・クーパー
撮影:バリー・マーコウィッツ
プロダクションデザイン: ワルデマー・カリノウスキー
音楽:T=ボーン・バーネット/スティーヴン・ブルトン
出演: ジェフ・ブリッジス/マギー・ギレンホール/ロバート・デュヴァル/ライアン・ビンガム/コリン・ファレル
ポール・ハーマン/トム・バウアー/ベス・グラント/ウィリアム・マークェス/リック・ダイアル/ジャック・ネイション


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"CHILL OUT-チル・アウト!"(2003) [movie-c]

東北関東大地震発生から1週間余り。震災後初の3連休。
今日は関東での計画停電もなく、気温も上がり、
東京はとてもいい天気で、しばし、震災の苛酷な状況を忘れさせてくれる。
それでも、今日も被災地では物資が足りず、寒さと不安に追い詰められている被災者がいるのも事実。
とはいえ、ここ1週間のキンキンに張りつめた精神状態をOFFにするため、
昨日の夜はワイン飲みながらのんびりDVD観賞。
たまたまTSUTAYA DISCUSで登録していて送られてきたスペイン映画、『チル・アウト』。
これがまた、いい意味でも悪い意味でもスペインらしい、開けっぴろげで不道徳で(いい意味で)、
神経を弛緩させるのになかなかの役割を果たしてくれたと思う。

邦題・英題のChill outとは、英語のスラングで「落ちつけよ」とか「リラックスして」という意味。
クラブ系ミュージックの中ではクールダウンさせるような比較的ダウンテンポな曲のことをさす。
スペイン語の原題はDESCONGELATEで、「霜を取り除く」という意味。
ちなみに英語のChillは冷たいという意味もあって、本編を観ると、
「うんうん」と納得できるようなネーミングになっている。

CAUTION!!
**この後の文章にはストーリーの一部が記載されています。
-------------------------------------------------------------------
さて、この物語の主人公は場末の弟ベルトの店で毎晩舞台に立つ冴えない俳優ティト。
彼は、元舞台女優で今は冷凍食品にはまる母カティと、
マクロビ教室を開くベジタリアンの妻イリスに挟まれながらも、
小市民的な幸せに包まれた日々を送っていた。
ところが彼に目を付けたジャンキーの映画監督アイトールが、
彼に映画の主役のオファーをするところから、どんどん話が展開してゆく。
クスリでラリった状態で、アイトールはティトを何か言うごとに「すかたん」と呼び、
彼の負け犬っぷりが次の映画の主役にぴったりと口説き始める。
褒められているのか貶されているのかわからない彼の口説き文句に、
はじめは疑ってかかっていたティトだが、プロデューサーもいて、話がリアルだと気づくと、
この幸運を逃してはならぬとばかり、イリスともども奮闘し始める。
ところが、契約書にサインをする直前になって、
アイトールがオーバードーズ(薬物過剰摂取)でぽっくりいってしまう。
慌てるふたり。
そこで、イリスが考え出したのが姑カティの得意技『冷凍』である。
死体を冷やして発見された時の死亡時間をうまく調節しようという魂胆だ。
都度介入してこようとするカティを追い払いながら、
契約をすませたあとで死体が発見されるよう仕組むが、そう簡単に事が運ぶわけがない。
様々なトラブルや様々な人々が絡んできて、ストーリーはどんどんドタバタ喜劇の要素を帯びてゆく。
とにかく男連中のダメダメっぷりと、カティやイリスをはじめ女連中のたくましさも見どころ。
同じスペインのアルモドバル監督作品でも思うが、
スペイン(イタリアもか)映画の中における、の女の強さ、母の強さは偉大である、と感じてしまう。

本当にいい意味でも悪い意味でも何も考えずに勢いで観られた。
とにかくトラブルがありながらも都合よく話が進んでゆくので、
「本当にそれでいいのか!!」「そんなことあるわけないじゃないか!!」
と突っ込みたくなるところも満載なのだが、
彼らの人の話を聞かない、あの勢いの良さ(人にもよるだろうけれど)、強情さ、
一方で開けっぴろげな悪気のなさや、なるようになるさ、人生を楽しもう、という姿勢は、
今の日本が少しは身に付けた方がよい生きる上でのあり方かもしれないと思った。
そして、被災地以外のすべてのみなさんに"Chill out!!"と言いたい。
落ち着いて、周りを見て、何が大切なのか見極めて、日々を丁寧に生きていきましょう。

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DESCONGELATE!
CHILL OUT
チル・アウト!
2003/ESP/97min

監督:フェリックス・サブロソ/ドゥーニャ・アジャソ
撮影:キコ・デ・ラ・リカ
音楽:マリアーノ・マリーン
出演:ペポン・ニエート/カンデラ・ペーニャ/ロレス・レオン
ルーベン・オチャンディアーノ/オスカル・ハエナダ/ホセ・アンヘル・エヒド

チル・アウト! [DVD]

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  • 出版社/メーカー: アミューズソフトエンタテインメント
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"CAPA in Love & War-キャパ・イン・ラブ・アンド・ウォー"(2002) [movie-c]

以前、so-netブロガーのkenさんに勧めていただいていた、ロバート・キャパのドキュメンタリー。
kenさんの素敵なレビューはこちらです。

キャパは報道写真家集団マグナムを創設した、多分いまだに世界一有名な報道写真家だろう。
ハンガリーからの亡命以来、激烈な好奇心に支えられたとどまるところを知らない抜群の行動力で、
報道写真家としての実績を残してゆくキャパ。
以前読んだリチャード・ウイーランの伝記で、その生涯の大体のところを知ってはいたのだけれど…。
この作品では存命する彼の友人、知人の証言をベースに、彼の作品を通して彼の生涯が語られてゆく。
やはり実際の映像、その時々の彼の作品を目の当たりにしながらその生涯を追うのは、
映像の力の相乗効果で、いい意味で印象的な体験になった。

このドキュメンタリーを観ていると、
彼を取り巻く人々が、いかに彼を愛していたか、彼がいかに人を好きだったか、がしみじみ伝わってくる。
彼は、現在報道写真家集団として確固たる地位を築いているマグナムの創設者のひとりであり、
イングリッド・バーグマンを含む、数々の魅力的な女性に愛され、映画にまで出演した経歴を持つ。

けれど。

そんな肩書きや名声ではないところに、キャパの魅力はあると思う。
彼はいるだけで周りを明るくし、被写体は彼がいることがまったく気にならないほど自由でいられたそうだ。
一方でひとところに落ち着けず、ときにはギャンブルにはまったり、映画界に片足を突っ込んだり。
長短併せ持つ強烈な、しかし愛すべきキャラクター。
そして、その魅力がそのまま彼の写真には現れていると思った。
色々語られる興味深いエピソードのひとつにこういうものがある。
キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、デイビッド・シーモアという、
マグナムの創立者のうちの三名(もう一名はジョージ・ロジャー)。
彼らが撮ったパリの人々の写真を比べてみたときに、その個性の違いがそのまま写真に現れているというもの。
D・シーモアは暗く、シリアスで、ブレッソンは構図に凝り、キャパは縦に長い構図で力強い作品が多い。
言葉で説明すると難しいのだけれど、見ると一目でその違いを認識できる。

昔、私が報道写真にまったく興味がなかった頃ですら、キャパの名前と彼の代表作は私の記憶に刻まれていた。
印象的な写真とはそういうものだという気がする。
どこがどう、という説明ができないのに、目を奪われる。
キャパの撮る写真はそういう魅力に溢れ、彼の人間性をそのまま体現するものだった。
だからあらゆる人の目を引き、忘れられない印象を残す。
それは彼の人生でいちばん驚かされるエピソードのひとつ、
「ロバート・キャパ」は実は捏造された架空の人格(アメリカの有名な報道写真家というふれこみだった)、
というエピソードに集約される気がする。
架空の人格さえ自分のものにして、自らが求める世界を作り上げていったキャパ。

彼は残念ながら40歳という若さで、インドシナで地雷による爆死を遂げるけれど、
その短い人生で彼が得た濃密な経験に思いを馳せると、
その濃密な経験を得るがための彼の情熱の強さに尊敬の念を禁じえない。
万難を排しても、自らの情熱が向かう場所を探したキャパ。
彼のようにまっすぐに生きられたら、と思う。
一度でいいから会ってみたかった、とも思う。
そうしたら、無条件で惚れてしまったかもしれない。

私の情熱の行く先はどこだろう??
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CAPA in Love & War キャパ・イン・ラブ・アンド・ウォー
ROBERT CAPA: IN LOVE AND WAR
2002/USA/90min

監督:アン・メークピース
撮影:ナンシー・シュライバー
音楽:ジョエル・グッドマン
ナレーション:ロバート・バーク
出演:ロバート・キャパ/イザベラ・ロッセリーニ/スティーヴン・スピルバーグ
アンリ・カルティエ=ブレッソン/コーネル・キャパ/フランソワーズ・ジロー
声の出演:ゴラン・ヴィシュニック

キャパ・イン・ラブ・アンド・ウォー [DVD]

キャパ・イン・ラブ・アンド・ウォー [DVD]

  • 出版社/メーカー: レントラックジャパン
  • メディア: DVD


文中にも出てくるキャパの伝記。
実は沢木耕太郎の訳で、かなり魅力的な本になっている。
キャパ その青春 (文春文庫)

キャパ その青春 (文春文庫)

  • 作者: リチャード・ウィーラン
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/03/12
  • メディア: 文庫


キャパ その戦い (文春文庫)

キャパ その戦い (文春文庫)

  • 作者: リチャード・ウィーラン
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/04/07
  • メディア: 文庫


キャパ その死 (文春文庫)

キャパ その死 (文春文庫)

  • 作者: リチャード・ウィーラン
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/05/12
  • メディア: 文庫

彼の自伝的作品。
ちょっとピンぼけ (文春文庫)

ちょっとピンぼけ (文春文庫)

  • 作者: ロバート・キャパ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1979/05
  • メディア: 文庫


欲しいけれどまだ手に入れていない作品集

Robert Capa: The Definitive Collection

Robert Capa: The Definitive Collection

  • 作者: Richard Whelan
  • 出版社/メーカー: Phaidon Press
  • 発売日: 2004/11/01
  • メディア: ペーパーバック


ロバート・キャパ 決定版

ロバート・キャパ 決定版

  • 作者: リチャード・ウェラン
  • 出版社/メーカー: ファイドン
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 大型本



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"Changeling-チェンジリング"(2008) [movie-c]

好きな監督の一人である、C.イーストウッド監督作品で、
当時それなりに話題になっていたにもかかわらず見逃していた作品。
長い作品だし、とても重いテーマだから、余裕のあるときに観ないと、と思って最近借りてみたけれど、
ワールドカップのおかげで(笑)なかなか手が出せなかった。

結論から先に言ってしまうと、当然のようだけれど、凄くよかった。

冒頭、『この作品は真実の物語である』、と静かに謳い、
観るもの皆に「こんなことが現実にあって本当に良いのだろうか」という思いを抱かせる。
このテーマが選ばれたというところに、イーストウッドの興味関心のベクトルが、
"正義"というキーワードにあるところを改めて感じたし、
時代考証や事件への徹底的な読み込みがなされているのも感じた。
揺るがない土台と優れた脚本、優れた役者、そして映画としての物語の再構築。
すべてが調和が取れ、適度な緊張感とスピード感に彩られた佳作。
イーストウッドはフィクション、ノンフィクションにかかわらず、
自らの視点をはっきりさせてテーマに取り組んでいるように思える。
出演はしていないまでも、イーストウッドの大黒柱的な存在感は常に感じられたし、
当時の腐敗したロサンジェルス市警への徹底的な批判と、事実を真摯に描きたいという姿勢があった。

女手ひとつで育てた息子が行方不明となり、5ヶ月の失踪の後、
帰ってきた息子がまったくの別人だったことから、
本物の我が子を取り戻すため、捜査ミスを犯した警察の非道な圧力に屈することなく、
真実を追及していくシングルマザー、クリスティン・コリンズ。
当時職業を持つ女性として責任ある立場を任される人は、アメリカでもまだまだ少なかったはず。
彼女を演じるのがアンジェリーナ・ジョリーなのだけれど、彼女の抑えていながらも強い演技が光る。
マイケル・ウィンターボトムとの『マイティ・ハート/愛と絆』でも思ったけれど、
アンジェリーナ・ジョリーはいい監督、いい役柄と出会うと、その演技力を遺憾なく発揮できる女優だと思う。
他にもジョン・マルコビッチやジェフリー・ドノバン、ジェイソン・バトラー・ハーナーらの演技もすばらしい。
それにしても当時のロサンジェルス市警の腐敗体質は相当なものだったようだ。
警察に自分の息子に仕立て上げられた子供を、「自分の子供ではない」と発言すると、
「あなたはノイローゼ」、「子供の育児を放棄したがっている」などのレッテルを貼り、
都合が悪くなると被害者であるはずの彼女を、なんと精神病院にまで入れてしまう。
そこには同様に警官に対する不都合な発言、行動を取った女性が多く収容されていた。
そして後半、ある犯罪者の登場によって物語は大きな展開を見せる。
クリスティン個人の戦いは、協力者や、次第に周囲を巻き込んで大きな流れになり結末を迎える。

個人の生活、安全、小さくもささやかな幸せが簡単に破壊されること、
それは簡単に起こりうること。しかし、強さを失ってはならない。
そう、クリント・イーストウッドに諭されている気がした。
ヨーロッパの民話を元にした、チェンジリング(取替え子)というタイトルも絶妙。

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CHANGELING
チェンジリング
2008/USA/142min

監督:クリント・イーストウッド
脚本:J・マイケル・ストラジンスキー
撮影:トム・スターン
プロダクションデザイン:ジェームズ・J・ムラカミ
衣装デザイン: デボラ・ホッパー
編集:ジョエル・コックス/ゲイリー・ローチ
音楽:クリント・イーストウッド
出演:アンジェリーナ・ジョリー/ジョン・マルコヴィッチ/ジェフリー・ドノヴァン/コルム・フィオール
ジェイソン・バトラー・ハーナー/エイミー・ライアン/マイケル・ケリー/ピーター・ゲレッティ
デニス・オヘア/コルビー・フレンチ/ジェフ・ピアソン/リリー・ナイト


チェンジリング [DVD]

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  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
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"CASSANDRA'S DREAM"-ウッディ・アレンの夢と犯罪(2007) [movie-c]

「ウッディ・アレンの映画は嫌い。もてない男の言い訳だから」

その昔、何かで読んだ台詞だけれど、
読んだ瞬間いい得て妙、と思ったこの台詞。
それから何作も彼の作品を観たけれど、
この台詞から感じた強い印象はずっと変わらない。
興味深いし面白いのに、なぜか心底好きにはなれないウッディ・アレン監督作品。

けれど、「マッチポイント」「タロットカード殺人事件」と続くロンドン三部作の最後を飾る本作は、
そんな「もてない男の言い訳」的作風から一線を画す味わい。

とりあえず、キャスティングが絶妙。
ロンドンのとある労働階級ファミリーの兄弟に、
ユアン・マクレガーとコリン・ファレル。
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これだけでこの映画の大半は成功したと言ってもいい。
実際、彼らのキャラクター作りはとても巧妙。
ホテル業界での華やかな成功を夢見る、頭のいい兄の役にユアン、
自動車の整備工と言う職業で地道な安定した生活の中に幸せを見出そうとするのに、
酒とギャンブルで身を持ち崩す、単純で愛すべき弟の役にコリン。
徹底したウッディ・アレン流リアリズムに裏打ちされた、
ギリシャ悲劇的かつ繊細な物語で、構成もしっかりしている。
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金銭的に追い詰められ、頼った裕福な叔父に逆に殺人を依頼され、
抜き差しならない状況に陥った兄弟の心理描写や、
ユアンが惚れた女のために偽りの「できる男性像」をでっちあげるところや、
小市民的幸せを求めているのに、なぜかうまく回らず彼女を心配させてしまうコリンの苦悩など、
針の穴を通すくらい細かいところまで気を使っている演出も、ウッディ・アレンならではの味わい。
ちなみに原題のCASSANDRA'S DREAMはコリンが大勝ちしたドッグレースの勝利犬の名前で、
カッサンドラとはギリシア神話に登場するイーリオス(トロイア)の王女。
悲劇の予言者として知られ、イタリア語でカッサンドラとは「不吉、破局」を意味するという。
ウッディ・アレンのなんとか、という邦題には食傷気味だし、原題の方がなんか洒落てると感じるのは私だけでしょうか。
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ただ、あえてそういう結末にしたのだろうと思うけれど、
たどり着いた結末が、案外想像に難くない、あっけない逆転劇で、
ウッディ・アレンが人生の不条理をいとも簡単に処理してしまっているところに、少しだけ違和感を感じ、
それでもラストカットの淡々とした感じは悪くないなと思った。

もし、私が彼らなら、一体どうしたかな。
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CASSANDRA'S DREAM-ウディ・アレンの 夢と犯罪
2007/UK/108min

監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
撮影:ヴィルモス・ジグモンド
音楽:フィリップ・グラス
出演:ユアン・マクレガー/コリン・ファレル/ヘイリー・アトウェル/サリー・ホーキンス
トム・ウィルキンソン/フィル・デイヴィス/ジョン・ベンフィールド/クレア・ヒギンズ
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"THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON"-ベンジャミン・バトン 数奇な人生(2008) [movie-c]

「セブン」「ファイト・クラブ」に続いてのコンビ、
デヴィッド・フィンチャー監督&ブラッド・ピット主演の大作。
S.フィッツジェラルドの短編を元に、80歳の老人として生まれ、赤ん坊として死んでゆくという、
文字通りCURIOUS(数奇)な人生を歩んだ男の物語。
167分の大長編、盛りだくさんの一大スペクタクル・ファンタジーだけれど、
テンポも良く、後半はもう少し丁寧に描かれていてもよかったんじゃないかと思うほどの内容だった。

まず、導入部、病院で看取られようとしている老女とその娘らしき女性が語る、
時間を巻き戻したいと思った男、そしてその男の作った時計から発展してゆくストーリー。
徐々にひきこまれていく感じは、先の展開が読めない大作ファンタジーをわくわくしながら読み進めてゆく感覚に似ている。
何よりVFX、美術等の技術の進歩に目を見張る。
第81回アカデミー賞では作品賞を含む13部門にノミネートされ、
美術賞、視覚効果賞、メイクアップ賞を受賞したのも納得の映像。
映画館で見逃したのはやはり失敗だったかな…と少し後悔。
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別人の体にブラッド・ピットの顔を合成、さらに老人の顔に…。ものすごい技術だ。
さらにはブラッド・ピットだけでなく、相手役のケイト・ブランシェットのバレエシーンなども、
別人の体に彼女の顔をばっちりのせて編集してしまう徹底ぶり、
彼女は全編を通して完璧なまでの美しさ。
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ベンジャミン・バトンが80歳で生まれ、老人ホームという特殊な環境の中で、
少しずつ若返り、成長してゆく経過と、
その過程で周囲を混乱させる中身と外見のギャップがこの物語の面白みをさらに増す。
ベンジャミンの父親役のジェイソン・フレミングや、母代りを務めるクイニーを演じるタラジP・ヘンソン、
ロシアで恋に落ちる人妻役のティルダ・スウィントン等々、共演者たちも実力派ぞろい。
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それぞれの登場人物とベンジャミンの関わりを追ってゆくだけでも面白い物語だが、
この作品の根幹にあるのはベンジャミンの、他人には計り知ることができないマイノリティとしての苦労、
誰一人としてその肉体的な問題を共有できないという事実による異質さだ。
ただ、この作品では彼の苦悩は設定によりかなり中和されている。
幼い頃から彼の周囲にいるのは老人や黒人など、比較的マイノリティとして扱われる人々だからだ。
そして「恵まれている」ともとれる運の良さ。
こういう設定の甘い感じというか、何となく主人公に都合よく話が進む感じが、
J.アーヴィングの長編だったり、「フォレスト・ガンプ」を思い起こさせる。

そしてもう一つの物語の柱、
彼と語り部である老女デイジーの関係性は物語の進行に合わせて徐々に暴かれてゆく。
彼らは見た目のギャップを超越して、子供の頃から交友を深めた、いわば幼馴染のようなもの。
デイジーは初めから彼を外見も含めて自然に受け入れ好意を持つ。
しかし二人が外見的にも精神的にもぴったり釣り合う瞬間はほんの短い期間だけしかない。
その蜜月は本当に短くて、彼らはその事実ゆえに深く愛し合えたのかもしれないとさえ感じられる。
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最後の展開は後半に入って何となく予測できてしまってはいたが、順当なエンディングだったと思う。

よくできているし、長編ながら飽きさせない、面白い作品だったと思う。
ただし、その良さと言うのは、視覚効果技術の物珍しさ、個々のエピソードの面白さによって成り立っている。
それらが寄せ集められた全体の雰囲気で、何となく「面白かった」というだけで終わってしまっていて、
残念ながら、心を動かされた、という感じは最後までしなかった。

それでも面白かった、ということに変わりはないのだけれど。


THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
167min/USA/2009

監督:デヴィッド・フィンチャー
製作:キャスリーン・ケネディ/フランク・マーシャル/セアン・チャフィン
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
脚本:エリック・ロス
撮影:クラウディオ・ミランダ
編集: カーク・バクスター/アンガス・ウォール
出演:ブラッド・ピット/ケイト・ブランシェット/ティルダ・スウィントン
ジェイソン・フレミング/イライアス・コティーズ/ジュリア・オーモンド/エル・ファニング
タラジ・P・ヘンソン/フォーン・A・チェンバーズ/マハーシャラルハズバズ・アリ
ジャレッド・ハリス /デヴィッド・ジェンセン


ベンジャミン・バトン 数奇な人生 特別版(2枚組) [DVD]

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 特別版(2枚組) [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
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ベンジャミン・バトン 数奇な人生 [DVD]

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • メディア: DVD


一応、原作も読んでみようかな…。

ベンジャミン・バトン  数奇な人生 (角川文庫)

ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (角川文庫)

  • 作者: フィツジェラルド
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/01/24
  • メディア: ペーパーバック


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"CONFESSIONS OF A SHOPAHOLIC"-お買いもの中毒な私(2009) [movie-c]

ここしばらく休みが少ないこともあり、少し疲れ気味なので、
またまた何も考えずに観られるガールズムービーを一本。

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一言で言うと、ショッパホリック=お買いもの中毒の女の子のロマンティックコメディ。
転職の面接に行く途中なのに、ショーウィンドーのマネキンに話しかけられ、衝動買い。
足は2本しかないのに、いつのまにか買いためてしまった山ほどの靴たち。
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そして予想していなかったカードの請求に青ざめ………
ん??…身に覚えが…(笑)。
要約するとファッションが好きで好きで仕方ない女の子が、
憧れのファッション誌で働くために、たまたま入社した経済誌で活躍するはめになり、
紆余曲折ありつつ恋と仕事に新たなる道を見出す、という話。

主人公のレベッカを演じるアイラ・フィッシャーはいまいち私の好みでなく…
役の設定は25,6なのに、この役を演じたときの彼女が33歳だったというから、
いくらなんでもそれはちょっと年齢制限オーバーでは??…。
そして彼女のライバル役のレスリー・ビブも当時35歳だそう。

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そこを足並みそろえても…(笑)。
まあ、それぞれ可愛いし、きれいだとは思うけれど、にじみ出る風格はいかんともしがたい。
この役は流石にもう少し初々しさを感じられるくらいの歳の子が良かったかなと言う気がする。
個人的にはレベッカの良き親友スージー役のクリステン・リッターのファニーフェイスの方が好み。

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彼女はよくラブコメなんかの『主人公の親友役』で出ているイメージがあるけれど、
なんとなくミニシアター系のちょっとPOPな、センスのある作品なんかに出てほしい気がする。

女子として、楽しむ部分は楽しめたけれど、それ以上でもそれ以下でもなかった。
私もお買いもの中毒者のひとりとして面白がるとともに、
ちょっと自分の衝動も反省しつつ、
レベッカの仕事に、恋に、ポジティブに動く行動力は見習いたいかな。

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"CONFESSIONS OF A SHOPAHOLIC"
お買いもの中毒な私
2009/USA/105min

監督:P・J・ホーガン
製作:ジェリー・ブラッカイマー
原作:ソフィー・キンセラ 『レベッカのお買いもの日記』
出演:アイラ・フィッシャー/ヒュー・ダンシー/ジョーン・キューザック/ジョン・グッドマン
ジョン・リスゴー/クリスティン・スコット・トーマス/クリステン・リッターレスリー・ビブ
フレッド・アーミセン/ リン・レッドグレーヴ/ロバート・スタントン/ジュリー・ハガティ

お買いもの中毒な私! [DVD]

お買いもの中毒な私! [DVD]

  • 出版社/メーカー: ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
  • メディア: DVD


Confessions of a Shopaholic

Confessions of a Shopaholic

  • 作者: Sophie Kinsella
  • 出版社/メーカー: Dell
  • 発売日: 2003/11/04
  • メディア: マスマーケット


Confessions of a Shopaholic (Movie Tie-in Edition)

Confessions of a Shopaholic (Movie Tie-in Edition)

  • 作者: Sophie Kinsella
  • 出版社/メーカー: Dell
  • 発売日: 2009/01/20
  • メディア: マスマーケット


"COCO CHANEL & IGOR STRAVINSKY"(2009)-シャネル&ストラヴィンスキー [movie-c]

「事実は小説より奇なり」
その人生が40冊以上もの伝記で語られる特別な女性、ココ・シャネルことガブリエル・ボヌール・シャネル。
彼女と作曲家のイゴール・ストラヴィンスキーの関係にスポットをあてて描かれた映画。
全編を通して静かな、そして映像からも、音楽からも、強さを感じる映画だった。
台詞は必要最小限。それよりも目線、ちょっとしたしぐさ、佇まいから、
それぞれの登場人物の心の揺れ動き、弱さも垣間見える。
根底にあるのは自らが生み出すものへの探究心と生み出された作品に対する矜持なのだけれど、
その隙間に人間としてのココとイゴール自身、
男と女の、一言では言い表しがたい、抜けられない迷宮のような愛情のようなものが見て取れる。
先に抜け出るのはココ。その強さは美しいが痛々しくもある。
男の弱さと対照的な女の強さは、私が女であるがゆえにその心情をを想像してしまうからか、痛みを伴っている気がする。
ココが愛したアーサー“ボーイ”カペルの死とイゴールと妻との関係、"春の祭典"のパリ公演の顛末、
それらを背景に描かれる物語は美しくも物悲しい。

全てが史実と合致するわけではないけれど、
それこそ生身のシャネルとストラヴィンスキー、真実の二人の関係を想像させるようなリアルな手触りが感じられた。
作家と、監督の想像力、そして役者の力だと思う。
何よりもアナ・ムグラリスの佇まいが素晴らしい。
シャネルのメゾンとカール・ラガーフェルドが全面的に協力した衣装やアーカイブ、
ルネ・ラリックに彩られたインテリア、これらを見られるだけでも素敵な映像体験だと思う。
音と、ファッションと、インテリアと、あらゆる美のミクスチュア。
劇中、ココがシャネルのNo.5の香りを決めるシーンがあり、
ここでその香りまで実際に感じられたとしたら…もちろんそこは想像するしかなかったけれど。
音楽もガブリエル・ヤレドなんて本当に隙がない。
ココがイゴールにピアノを教わるシーンは、雰囲気は違えど"ベティ・ブルー"の名シーンを思い出したりした。
ただひとつ、晩年のふたりを映し出すシーンは必要だったのかなぁ…とちょっと疑問だったけれど。

美しいものを愛することにためらわずにいられる人と、
愛の儚さを見ることを厭わない人に観てほしい作品。

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ココ・シャネル本人 by アンリ・カルティエ・ブレッソン
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"COCO CHANEL & IGOR STRAVINSKY"
シャネル&ストラヴィンスキー
2009/FRA/119min

監督:ヤン・クーネン
製作:クローディー・オサール/クリス・ボルズリ
原作:クリス・グリーンハルジュ 『シャネル&ストラヴィンスキー』(竹書房刊)
脚本:クリス・グリーンハルジュ/ヤン・クーネン
撮影:ダヴィド・アンガロ
美術:マリー=エレーヌ・スルモニ
衣装:シャトゥーヌ ファブ
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演: アナ・ムグラリス/マッツ・ミケルセン イゴール・ストラヴィンスキー/アナトール・トーブマン
エレーナ・モロゾーワ/ナターシャ・リンディンガー/グリゴリ・モヌコフ

映画の原作。
シャネル&ストラヴィンスキー (竹書房文庫)

シャネル&ストラヴィンスキー (竹書房文庫)

  • 作者: クリス・グリーンハルジェ
  • 出版社/メーカー: 竹書房
  • 発売日: 2009/12/22
  • メディア: 文庫


ココ・シャネルという生き方 (新人物文庫)

ココ・シャネルという生き方 (新人物文庫)

  • 作者: 山口 路子
  • 出版社/メーカー: 新人物往来社
  • 発売日: 2009/08/07
  • メディア: 文庫


ココ・アヴァン・シャネル 上―愛とファッションの革命児 (ハヤカワ文庫 NF 350) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ココ・アヴァン・シャネル 上―愛とファッションの革命児 (ハヤカワ文庫 NF 350) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: エドモンド・シャルル・ルー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: 文庫


ココ・アヴァン・シャネル 下―愛とファッションの革命児 (ハヤカワ文庫 NF 351) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

ココ・アヴァン・シャネル 下―愛とファッションの革命児 (ハヤカワ文庫 NF 351) (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

  • 作者: エドモンド・シャルル・ルー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: 文庫


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