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ぐるりのこと [movie-か行]

久々に続けて邦画を。

「二十才の微熱」「ハッシュ!」の橋口亮輔監督が、一組の夫婦を主人公に、
生まれたばかりの子どもの死という悲劇を乗り越え再生していくまでの経過を追った作品。
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妻の家族にダメ出しばかりされている優しいけれど冴えない夫役にリリー・フランキー。
小さな出版社に勤めるまじめな妻役に、木村多江。
彼らが子供を失った後、それを乗り越えてゆくまでを、
淡々とした日常のエピソードの連なりで表現しているだけの話なのに、きちんと観客を引き込む力があるのは、
スタッフとキャストの力が相乗効果を生んで、実を結んだ、というだけの、
とてもシンプルな努力の結果なのかもしれない。
派手さはないけれど、丁寧で、温かい作品に仕上がっている。
ゆったりした間と、人間味溢れるリアリスティックな情感。
木村多江が日本アカデミーで主演女優賞を取った作品であるけれど、
彼女以外の個々の役者の丁寧な仕事も光る。
リリー・フランキーはその独特の存在感だけで許されている感もあるけれど、
この人の間や雰囲気は役者が真似ようとしても難しい、それこそ稀有のキャラクターなので、
そういう意味でこの作品に不可欠な存在だったとも言えるだろう。
彼が法廷画家として採用され、作中いくつも実在の事件をモチーフにした公判の様子が描かれるけれど、
その犯人役の加瀬亮や新井浩文などの演技もまた一見の価値がある。
特に新井浩文の演技は身震いするようなものだった。
ちょっとした法廷のシーンに出てきているだけなのに、驚くほどの存在感。
記者や、法廷画家仲間との絡みや夫婦の先輩や家族との絡みも、
普通の日本の人たち、という印象が、逆に強い印象として残り、この作品を支えている。

お互い愛情表現は下手で、表面上は危うそうに見えながらも、強いきずなで支えられている夫婦。
どんなになっても壊れなかったその絆が二人を救った、その様子が実に丹念に描かれているだけで、
そんな作品を映画として成立させるのには並大抵でない努力があったと思う。
多分、日本文化を理解していないとこのあたりの機微は理解しづらいだろうなとは思う。
偉そうに言う私も、愛し合う夫婦のほんとのところは、きっと理解できていないのだけれど。

普通のことを、普通に描こうとするのが、実はきっといちばん難しいのでは。
ぐるり001.jpg

ぐるりのこと。
2008/JPN/140min

監督:橋口亮輔
企画:山上徹二郎
原作:橋口亮輔
脚本:橋口亮輔
撮影:上野彰吾
美術:磯見俊裕
編集:橋口亮輔
音楽:Akeboshi
出演:木村多江/リリー・フランキー/倍賞美津子/寺島進/安藤玉恵/八嶋智人/寺田農
柄本明/木村祐一/斎藤洋介/温水洋一/峯村リエ/山中崇/加瀬亮/光石研
田辺誠一/横山めぐみ/片岡礼子/新井浩文


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こちらも結構面白いです。

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リリーさんは、あえて、「東京タワー」ではなく、エッセイなどをどうぞ。
途中まで、下ネタかと思いきや、意外と鋭く深層心理をえぐるコメントがあったりします。

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nice!(8)  コメント(4)  トラックバック(1) 
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コメント 4

ken

>普通のことを、普通に描こうとするのが、実はきっといちばん難しいのでは。

そうなんです!…と言ってもこの夫婦はフツーの夫婦じゃないけど。
僕は木村多江が炊飯器を覗きこむシーンが一番好きです。
by ken (2010-10-26 21:40) 

movielover

>>kenさん

確かに炊飯器のシーンの木村多江さんすごく良かったです。
フツーの夫婦、なんてホントはいないのかもしれないですね。
みんな、外からは分からない、何にもないようなところで実は苦しんだり、乗り越えたりしてるのかもしれません。
とてもいい映画でした!!
by movielover (2010-10-27 01:40) 

クリス

印象的でしたね、この作品。
みた感じじゃ解らない、2人のきずなの強さが感じられて、
よかったです。
by クリス (2010-10-31 08:03) 

movielover

>>クリスさん

はためでは分からない二人の絆がそれとなく描かれていてよかったですね。
静かで、でも印象的な映画でした。



by movielover (2010-10-31 22:15) 

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